少しの間、許してもらえませんか。 

 フルーティストの夢に挫折した知恵子はある日、酒に酔っていたところ、ギターの音色に誘われ廃港通りへと迷い込んでしまった。 
 地図にないその場所は、沖に沈んだ軍艦の折れたマストの聳える、かつて使われていた軍港の名残だった。 
 彼女はそこで、大勢のオーディエンスに囲まれながらギターを弾く一人の青年を知る。 彼は愛想もなく顔を伏せたままでいたが、その情感あふれる美しいギターの音色は知恵子を魅了した。 
 求めていた音楽がそこにある。 
 そう確信した知恵子は彼とのセッションを熱望し、近づこうとする。 しかし、彼を知る者たちから止められてしまう。廃港通りには、彼と関わってはいけないという暗黙のルールがあった。

舞台

海緑の町・廃港通り

東の外れにある小さな港町。かつては軍港として栄えていたが、現在は閉鎖され、地図からも消されている。沖には当時沈んだ軍艦の折れたマストがそのまま残っている。様々な事情で身分を失った者が辿り着く最果ての町でもある。

リダン

知恵子の先輩が「猫のようなやつら」と忌み嫌う、人間に似た獣。まさしく猫のように高い身体能力を持ち、戦争では人間の代わりに敵地へ向かう。警戒心が強く、保守的ではあるものの、猫じゃらしで簡単に捕まえることができる。